研究開発室・室長(研究・開発の責任者)

S.T

2006年 中途入社

SAIKAに入所したキッカケを教えてください。

他県で自動車関係の仕事に就いていたのですが、和歌山にUターンすることになり、大学で学んだ化学を生かせそうな会社を探していた時に見つけました。
2~3月頃の求人があまり無い時期だったので、化学関係の会社を調べて順に直接電話を掛けていったところ「せっかく電話をくれたのだから」と面接していただいたことがキッカケです。
SAIKAのことはこのとき初めて知りました。

SAIKAにはどのようなイメージを抱いていましたか?また、入所前後でギャップを感じることはありましたか?

入所前は「雑賀技術研究所」の名のとおり「技術研究所」をイメージしていました。
その点は入所後も特にギャップを感じることはなく、イメージ通り様々な技術・製品が開発されていました。
ただ、自分の業務に関しては、入所前に考えていた「化学関係」とはかけ離れたものになりました。

入所後、「分析機器の製造・保守、データを蓄積するための分析」「機械設計」「レーダー技術の開発」……等々、いろいろなご経験をされています。入所前に考えていた「化学関係」からかけ離れたものに携わることに戸惑いや不安はありませんでしたか?

当初はもちろん不安はありました。ですが、日に日に自分が技術者として成長していることを実感することができて、不安は小さくなっていきました。また、自分の知らない技術にふれる楽しみがありました。
現在、開発メンバーの相談にのるときにも、化学系、機械系など幅広い分野に関わった経験が活きていると思います。といっても専門で携わった人には遠く及びませんけどね。
今につながる、とても良い経験をしたと思います。

数あるご経験のなかでも特に、レーダー技術の開発がS室長に大きな影響を与えたのではないか、との声があります。

確かに、自分が最も成長したのはレーダー技術の開発(以下「レーダー開発」)の頃だと思います。
多くのことを学びましたし、未知の分野に関わり「どうやって新しいものを生み出すのか」「(既存のものを)どう発展させていくのか」といった課題に対する考え方や物事の見方が深化したと思います。

「未知の分野」の開発をどのように進めていくのか、特に「はじめの一歩」の想像がつきません。S室長の「はじめの一歩」はどのようなものだったのでしょうか?

まず先輩方が何を言っているのか、言葉の意味が全くわからない状態からのスタートでした。
レーダー開発担当になって早々、上司に「マイコン(※)をやってみようか」と言われたのですが、僕は「マイコンって何ですか?マイコンピューターのことですか?」と質問するような、そんなレベルでした(笑)
※マイコン=プログラムを書き込んで電気機器を制御するための半導体チップ。マイコンピューターの略、ではない。

まさにゼロからのスタートだったんですね。そこからどのようにスキルを身に付けていったのでしょうか。

「マイコンって何ですか?」のあと、上司がどこにもつないでいないコードがついたモーター単体をぽんっと持ってきてくれました。困惑していたら「モーターを自由に制御して」と。「制御して」と言われても意味がわからなくて……。
「制御って何?どうするんだ?」と頭の中は疑問符だらけで混乱していましたが、制御に必要なのがマイコンである、と教えてもらいました。
その次にマイコンの基板を持ってきてくれたのですが、モーターのコードをつないでも、プログラムが入っていないと動かない、だからプログラムを書かないといけない、という風に話がつながりました。
そこで、モーターを自分の考えたとおりの動きに制御することを最初の目標に掲げました。
モーターのマニュアルを読むと制御の方法が載っているので、それを確認して、プログラムはどう書くのか調べながらおよそ1週間で自分がやりたい動作を書くところまでできるようになりました。

何も知らないところから1週間で!

確かそれくらいだったと思います。このとき一気に頭に詰め込みすぎて、漫画の表現でよく見かける「頭から湯気が出る」ような感覚を味わいました。考えすぎて頭が熱くなってくるんですよ(笑)。
これでようやくスタート地点です。
マイコン自体にはボタンがないので、例えばモーターの回転を逆にしたい、となるとPCにつないでPCから命令することになります。なので、今度はPCから命令するためのプログラムが必要になり……と、そんな感じで少しずつスキルを身につけていきました。
でもこれはあくまで「モーター」を動かすためのもので、「レーダー」を動かすまでには至りません。
まだ知識が浅い頃に展示会に出たのですが、ブースを訪問してくれた人から「こんなことも知らないの?」と言われました。レーダーの開発担当なのに、相手の方が詳しくて答えられないなんて悔しいですよね。ですので、プログラミングと並行してレーダーについて原理から学びました。

レーダーの開発終了後は、研究・開発テーマの企画や調査、新規プロジェクト等を担当されました。
印象に残っていることはありますか?

今でもはっきりと思い出せるのは、SAIKAの既存技術の応用で「こういう製品を作ったらいいんじゃないか」という案を出したときに、その場にいた全員から反対されたことです。
最初から「満場一致の賛成」だとそれはそれで「本当に大丈夫だろうか?」と心配になりますし、開発に反対意見はつきものだと思っているので反対が出ること自体はなんてことないんですけど……もうね、すごく「けちょんけちょん」だったんですよ(笑)

けちょんけちょん、ですか (笑)

「こいつは何を言っているんだ」みたいな反応でしたね(笑)。ダメならダメで、ダメな理由等の議論をしたかったのですが、そこにも至らず……。門前払いとはこういうことか!と。
あくまで「相談」の段階だったのですが、思い付きでぱっと言ったものではなく、僕なりに色々調べてここを狙ったらいけるんじゃないか、と考えていたので悔しかったです。
今改めて振り返ると、営業にとって「売りづらい」ものだったからあのような反応になったのかな、と思います。
こういう悔しい気持ちや歯がゆい思いは、プロジェクトリーダーを務めさせていただいた外部との共同プロジェクトでも経験しました。
共同プロジェクトは残念ながら製品化には至りませんでしたが、「技術開発」だけでなくテーマの方向性検討や共同研究先との交渉などを経験したことは、今の自分にとって財産になっていると感じます。

共同プロジェクトに限らず開発は「世に出ない・断念する」ものの方が多いと思います。
それでもS室長が開発を続けるのは何故ですか? 開発の魅力、面白さとは何でしょうか?

もちろん、開発した技術がカタチになって世にでたときやお客様からの良い反応を得たときは、とても嬉しいしやりがいを感じます。
でもそれだけが開発を続ける理由ではありません。
「新しいものを生み出すこと」に携わること自体が面白く、魅力があります。
アイデアを考えているときや、新たなアイデアを試した結果を確認することが楽しみです。世に出すことだけではなく、そこに至るまでに出てくるたくさんの技術課題を解決していくプロセスそのものがとても面白くてワクワクします。

開発の難しさ、苦労はどんなときに感じますか?

開発はアイデアを生み出す発想力が重要で、これがとても難しいと思います。
例えば、世の中の困り事はたくさんありますが、「『どのような方法で』解決するのか」このアイデアが重要になります。技術課題でも同じです。
また、「自分が開発しているもの」が「これから」どのような効果をもたらすものなのか、その点を常に意識して開発に取り組まないといけません。
当たり前ですが「新しいもの」ですので実際の効果はまだ出ていません。「これから」どのような効果をもたらすのか、どんな価値を生み出していくのか、誰にもわからない。そんな中で関係者にその価値を伝えながら進めていくことになります。
時には反対意見も出る中で、自分だけは自分を信じて進めていく、という粘り強さ、熱意、まわりを巻き込んで進める力が必要です。

現在SAIKAの開発メンバーは、技術の開発だけでなく普及まで携わっています。開発者自ら普及に携わるのは何故でしょうか?

まず、お客様の反応を直接確認できるので、次の開発や改善につなげられることが大きな理由です。開発のゴールは「世に出すこと」ではありません。さらに進化させるために開発は続いていきます。
そして私は、「自分が開発したものは自分が一番詳しく在るべき」だと考えているので、その点からも必然的に普及にも携わることになると思っています。
先ほど、開発の難しいところは「『新しいもの』が『これから』どのような効果をもたらすものなのか誰にもわからないところ」と言いましたが、普及の段階でも同じことが言えます。「新しいもの」の価値を伝えるのは、「他の誰よりも詳しい」開発者自身が最も適しているのではないでしょうか。
だからこそ開発者は、誰かが普及してくれるという考えではなく、自らが中心となって普及まで携わるという考えを持ってほしいと思っていますし、開発メンバーにもそのように伝えています。人に「売ってください」と任せるのではなく、「売らせてほしい」と言われるところまでもっていってやろうじゃないか、と。

研究・開発の道を目指す方や、就職活動中の方に向けてメッセージをお願いします。

これから研究・開発を目指す方はぜひ、自分の開発に熱意を持って取り組んでください。
開発では、「こんなの意味あるの?」「いつまでやっているの?」というようなことを言われることも多々あります。時には反対されることもあるでしょう。でもそんな時こそ、「世の中を良くするものを開発しているんだ」「自分が一番知っている、考えているんだ」と熱意をもって取り組み、困難を突破する力が重要になってくると思います。
社内では反対を受けていたけれどこっそり開発し続けたものが実を結んだ、なんて話もよくテレビとかで見ますよね。もちろん、承認を得ていないのに業務時間ずっとこっそり続けるのはダメですけど……(笑)。

SAIKAは、「技術を通じて社会の利益と発展に貢献する」を企業理念とし、これからも技術を駆使して新しい価値(製品・サービス)を創造し、継続して世の中へ提供していきたいと考えています。
役職や立場に関わらず意見が言いやすく、やりたいことに挑戦しやすい環境ですが、例え周りの人に厳しい意見を言われたとしても簡単には諦めずに「ただの通過点」と考え、その先の「新しいものを創造し、世の中へ届ける」ことを意識して挑戦し続けてほしいです。
何事にも熱意をもって取り組める仲間を待っています!